睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)とは、睡眠中に何度も呼吸が止まる病気です。
気道(空気の通り道)が閉塞してしまうことが大きな要因として挙げられます。気道を狭くさせる原因はさまざまです。
いびきは、睡眠中に発生する舌や軟口蓋(のどちんこ)などの粘膜の振動です。そのため、「いびきをかく」ことは、何らかの原因で睡眠中に気道が狭くなっている証拠です。「いびきは病気の危険信号」といわれています。 しかし、睡眠中のことですのでご自身では気づきにくいのが、この病気の特徴です。ご家族やベッドパートナーなどから睡眠中の「無呼吸」や「いびき」を指摘されたような場合は、お早めに受診されることをおすすめします。
十分な睡眠時間をとって身体を休ませているつもりでも、無呼吸のたびに酸素不足のため覚醒が起こり、質のよい睡眠をとることができません。
その結果、起床時に頭痛が生じたり、日中の眠気や倦怠感が強くなったり、活力・集中力の低下を自覚したりします。
睡眠中のいびきや無呼吸を放置しておくとことは、著しいQOLの低下に繋がることがわかってます。
高血圧や糖尿病などの生活習慣病との合併率の高さが問題視されています。
2003年の山陽新幹線運転士居眠り運転事件のように、日中の眠気が、交通事故に繋がる可能性が高いことが明らかになっております。
問1 |
毎晩、激しいいびきをかきますか?(★) |
問2 |
睡眠中、呼吸がしばしば止まっているといわれますか?(★) |
問3 |
睡眠中、寝返りや体動が激しいですか? |
問4 |
眠りが浅いですか? |
問5 |
睡眠中、何度も排尿のために起きますか? |
問6 |
起床後、寝床が湿ってませんか? |
問1 |
朝、起きた時、疲れた感じがありませんか? |
問2 |
朝、頭痛や頭重感がありませんか?(★) |
問3 |
日中、眠たくありませんか?(★) |
問4 |
日中、よく居眠りをしませんか?(★) |
問5 |
仕事中、集中力がなくなることはありませんか? |
問1 |
体重が多くありませんか? |
問2 |
血圧が高くありませんか? |
問3 |
就寝前にアルコールを飲みませんか? |
問4 |
男性の方では、首まわりのサイズが42cm以上ではありませんか? |
激しいいびきや睡眠中の無呼吸の指摘があり、日中の眠気が強い場合、睡眠時無呼吸症候群である可能性が濃厚です。
(★)が1つ以上あてはまる方、(★)以外の質問に2つ以上あてはまる方は睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
睡眠障害とは不眠のみならず、日中の過剰な眠気を引き起こす過眠症や、睡眠のリズムが乱れたまま元に戻らなくなる概日リズム睡眠障害など、関連するさまざまな病気の総称を表しています。多くは睡眠の質が原因のため、「眠れない」「寝た気がしない」などの自覚症状がありますが、病気として疑うことが少なく、症状が悪化してから来院するケースがほとんどです。現代社会において、成人の5人に1人が不眠に悩んでいるというデータもあり、睡眠障害は誰でも発症するリスクがあります。
ナルコレプシーや特発性過眠症、反復性過眠症などがあります。
ナルコレプシーは昼間の著しい眠気、居眠りが繰り返し生じます。通常では考えられない状況で眠り込んでしまうこともあります。また、喜びや興奮などの感情の動きによって誘発される脱力発作がおきることがあります。反復性睡眠潜時検査(MSLT)などで診断を行います。その他精神疾患の合併もあることもあり状況により心療内科や精神科と連携をとり治療を行います。
起きている時間帯を自分自身でコントロールできず、複数回の居眠りを日中に繰り返し、夢を見ることも増えます。眠り込んでしまう時も多く、日常生活に支障をきたす可能性もあります。治療では薬物療法と生活指導を組み合わせ、日常生活に与える影響をできるだけ抑えることをめざします。
不眠症にはさまざまなタイプがあります。
①なかなか寝付くことができない入眠障害型
②途中で何度も目が覚めてしまう中途覚醒型
③朝早く目が覚めてしまう早朝覚醒型
④ぐっすり眠れない熟眠障害型
などがあります。問診などにより内服薬や生活指導などにより治療を行います。また、なかなか睡眠薬を減らすことができない方に対して減量スケジュールを組んで睡眠薬の減量を目指します。
レストレスレッグス症候群とも言われ、下肢を中心に夜間睡眠時に不快な耐えがたい感覚が起こり、このためじっとしていられなくなり不穏な運動を生じます。異常感覚は痛み、不快感、虫がはう感じ、むずむず感、かゆいなど多彩な表現で訴えられます。下肢を動かしているときには起こらず、臥床もしくは座っていて動かさないときに生じます。そのため入眠困難になったりします。原疾患として鉄欠乏性貧血やパーキンソン病、多発性硬化症、腎不全など関連ある場合があり注意が必要です。
以下のような症状のある方は医師に相談してください。
①感覚異常のために強く足を動かしたいという欲求が存在する
②安静状態で症状が発言もしくは増悪する
③体(四肢)を動かすことにより改善する
④症状は夕方~夜間に発現もしくは増悪する
夜間睡眠中に片側あるいは両側の足関節の背屈運動を主体とする周期的は不随意運動(周期性四肢運動)が反復して起こるため睡眠感の障害を生じ、昼間の眠気・倦怠感などを呈します。
その他の睡眠関連運動障害には睡眠関連下肢こむらがえり、睡眠時ブラキシズム、睡眠関連律動性運動障害などがあります。
朝起きて夜寝るという睡眠・覚醒相が仕事や勉強などで前方後方に移動したりすることにより生じる睡眠障害です。眠気や精神作業能力の低下、疲労感、食欲低下、ぼんやりする、頭重感、胃腸障害、眼精疲労など症状は多彩です。交代勤務のある職業の方などにも起きやすく、学生さんでは不登校の原因にもなりうる病気です。他の睡眠障害の除外が大切であり、生活習慣の改善や薬物治療、高照度光療法などを行います。
睡眠中でも脳が活動する、レム睡眠時に見られる睡眠時随伴症で、特に高齢者に多いといわれます。寝言や悪夢、睡眠中に突然起き上がるといった異常行動など、さまざまな症状が挙げられます。なかには神経疾患に悪化する症例もあり、医師の判断が適切な治療には必要不可欠です。
小児でも、いびきや睡眠時無呼吸症候群、昼間の眠気やむずむず脚症候群などの睡眠障害が起こる可能性があります。扁桃肥大やアデノイド増殖がもともと年齢的に起きやすく、重度の睡眠時無呼吸症候群があることがあります。また小児は大人と異なり身体、精神発達に影響を与えることが多く、年齢に比べて体が小さい、落ち着きがない、寝相が悪い、夜尿などがある場合には注意が必要です。
睡眠中にもかかわらず、歩き出して食べ物を食べ、満足するとまた睡眠に戻るという行動パターンを示す病気です。睡眠時に起こるため記憶がほとんどなく、過食状態を引き起こすときもあります。食べた形跡から症状に気づくケースが多くあり、調理をしていた場合はケガやヤケドのリスクも高まります。
ノンレム睡眠からの覚醒障害の一種でその他、睡眠時驚愕症(夜驚症)、錯乱性覚醒など同様に小児に多い疾患です。夜間徘徊が主症状だが、起き上がって寝床の上に座るだけのものから、物置での放尿など様々です。呼びかけなど周囲からの刺激には反応しないことが多く、睡眠の最初3時間以内に生じ多くは15分程度のエピソードで終了します。エピソードが終夜睡眠ポリグラフィー検査では深いノンレム睡眠期から生じることが特徴です。
夜尿症・睡眠関連うなり(カタスレニア)・頭内爆発音症候群・睡眠関連幻覚・睡眠関連摂食障害などがあります。
まずは睡眠を妨げている原因を明らかにし、睡眠の環境や習慣を整えることから治療は始まります。身体に合った寝具を選び、睡眠のサイクルを一定に保てるようになると、安定した睡眠を得られやすくなります。
他の治療法として、薬物療法やカウンセリングなどの提供も可能です。
睡眠に関する正しい知識を身につけ、ご自身の睡眠習慣を見直すことも、睡眠障害の治療に大切です。
「寝る前にカフェインを含むコーヒーやお茶を飲む」「昼寝が長くなりがち」など、睡眠の妨げになる習慣を今すぐやめるように心がけましょう。カウンセリングでヒアリングした内容をもとに、何が睡眠の妨げになっているかをアドバイスいたしますので、ご安心ください。
薬物療法として用いる睡眠薬は、睡眠に関連する脳内物質の分泌をコントロールする役割があります。睡眠導入薬は主に、ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系がありますが、ベンゾジアゼピン系の場合はもの忘れや筋弛緩などの副作用のリスクがあり、ご高齢の患者さまの服用には適しておりません。
認知行動療法とは、頭の中に浮かぶイメージである認知と行動を変えていき、症状の改善をめざします。
「寝室は寝るだけを目的にする」「睡眠と起床の時間を一定に保つ」などの工夫により、不眠に対する意識がネガティブなものにならないようにサポートします。薬物療法に比べると即効性は少ないですが、正しい睡眠のリズムが意識と行動にインプットされているので、治療効果の持続性が長いことが特徴的です。